ドン引きの衛の顔は、「何言ってんだこいつ」と喋っている。
それは昔馴染みだから言える言葉だと流は思う。
流は、衛ほど紫を知らない。だから、知りたいと思う。
「衛はそう言うけどさ。……なんだろーね。欠点? とかは、そりゃ思いつくんだけど、紫以上の――何かがね、いないんだよ」
「………哲学的?」
「いや? ただの惚れた理由がわからないって話」
「一目惚れ?」
「だとは思うんだけどね。……思うんだけど、蒼だったら、紫とガチで付き合っててもいいなーとか思っちゃうワケ」
「お前……紫の基準で蒼と比べりゃ全世界が敗北だろが」
紫の基準で、それこそ蒼に勝つモンも克(か)つモンもねえよ、と付け足された。うん、と肯く。だろうね。
何故か、じっと衛がこちらを見て来た。
「なに?」
「流……俺の周りに珍しく純粋だな」
「……は?」
「うん。ここまで純粋な奴知らんわ。よし、これからピュア流と呼ぼう」
「ちょ、ちょっと待て。なんかかなり恥ずかしい上に誤解がついてきそうなんだけど」
なんでそんな呼ばれ方を、もうすぐ高校生男子がされる。かなり恥ずかしいよ。
「だって俺の周り、計算高い奴とかただのバカとか計算高いバカとかしかいねえんだもんよ。お前貴重だよ」
「………」
計算高いのは蒼やその妹で、もう一つは帝のことなのだろう。最後は誰だ?