事実であると承知していたので、衛は帝の許へ向かう前に、喧嘩しやがった学友たちから謝罪の言葉も引き出していた。
(……あ、そうだ。翠が、流(ながれ)もくるって言っていたっけ)
蒼の上の妹の紫は、小学校時代にスカウトされて雑誌でモデルをやっている。
スラリと手足の長いスタイルに、雪国で育ったような白い肌。流れるような黒髪に、柔らかい眼差しの紫は、今や女子中高生の憧れの存在だった。
……その紫が超重度のブラコンだと知る者は少ない。
作樹流(たつき ながれ)は紫の同い年のモデル仲間だそうだが、紫に仲間以上の感情があるようだ。
蒼たちの家である孤児施設、サクラ聖堂で何回か逢ったことがあるが、いつも紫のことを見ていた。
あまり勉強は得意ではないらしいが、帝同じく紫への執着か、流も桜学への入学が決まっている。
今のところ、衛がクラスメイトになると知っているのはこのくらいだ。
――同学年、ではなく、クラスメイト。
一組から十組まで、漢数字で分けられる学年の中のクラスだが、一組だけ『Pクラス』と呼ばれるクラスがあった。
十一番目のクラスだ。
学内では『ポイズン』の『P』だと囁かれるそのクラスは、問題児を集めておくような扱いのクラス、だった。
今年度までは。