彼女の、その命が美しいと思った。
穏やかに幼い子供たちを見つめる眼差しに、一瞬で意識を奪われた。世界から彼女以外の総てが消えた気がした。
月の女神のような凛とした姿と、太陽を宿したような強い光の眼差しに、触れる度惹かれて止まない。
彼女が一番に大事にするのが家族であって、家族以上のものはないと思い知っても、彼女の一番になれなくても――近くで、友達としてくらい、近くにいたいと願った。
……そうしたら、ストーカー扱いされるようになった。なんで。
幸いなのは、彼女の最愛の兄に、彼女に近づくことを許されている点だ。
もし兄に『紫に近づくんじゃねえ』とでも言われたら、兄が世界で一番の存在の彼女は、その言葉に従って自分の存在すら無視するだろう。
……なんでそんな子に惚れたんだろう、自分。
例えば、気骨の強さとか。
例えば、幼い子に差し伸べた手とか。
強さと優しさを内在させた彼女の、その命に惹かれた。
……蒼に勝てなくてもいい。だって蒼がすごい奴だって、すごくいい奴だって、流は知っている。
もし紫が本気の恋愛感情で蒼に惚れていてもいい。二人が兄妹と言ってもそれは体面上で、戸籍上の繋がりも血縁上の関係もないから結婚することにだって支障は何もないはずだ。
だから、紫の一番にはなれなくてもいい。ただ、いつものその光の近くにいたいんだ。
友達って、呼ばなくてもいいから。