「んー」
背もたれに思い切り寄りかかって、調は背伸びをした。目が死ぬ。
昨日卒業式を終えた調は、高校入学の準備にいそしんでいた。
目の前には鞄に入れて持ち歩けるサイズのノートパソコン。部屋にはほかにデスク型のパソコンもある。それ以外にも色々な機器が回路を作っている。
「あー……でもこれ潰しておかないと蒼たちに逢わせる顔ないよなー」
伸びの姿勢で、握った手をぶんぶん振り回す。
調は公立の中学校に通っていた。草賀帝、尊兄妹と同じ学校。
そんな調には、桜宮学園高等部の入学式のその日、三年ぶりに逢える旧友がいる。
調は城葉都市に勤める両親がいるため、初等部は桜宮学園に通っていた。
が、初等部でちょっとした問題を起こしてしまい、中等部には進学出来なかった。
後から事態を知った蒼と衛が調の中学にやってきてしこたま怒られた。
一緒に来た翠には一発喰らった。
高等部の復帰も半ばあきらめていたのだけど、ダメ元で出した願書が通ってしまった。
調は、成績は優秀な方なので、調の過去の悪行を知らない教師たちは生徒の名門への進学を手放しで喜んでいたけど、調は首を傾げた。
なんで今更受け容れてくれんだろう、と。
桜学(さくがく)は調が起こしたことを隠したがっていた。
そのため、調が追い出された理由を中学の中で知る人は一人もいなかった。
――いなかった、けれど、たぶん入学すれば、二人くらいには知られてしまうだろう。
調と一緒に、三人だけ桜学に受かった級友の帝と尊に。