以前、衛たちの中学校の生徒と問題を起こしやがったので、生徒会長を押し付けられていて口の上手い蒼とともに他校の帝に話をつけに行ったことがある。

――と言っても、蒼は武闘派ではないので、もし暴れるようだったら衛が全部対応するという条件つきで狩りだしたのだ。

そしてまさしく一閃に付された帝は、以来誰彼と喧嘩をすることなく衛しか眼中になくなってしまった。

(……なんであーなったんだろ………)

蒼に頼んで説き伏せてもらえばよかった。

蒼の弁舌は教師も言いくるめるし言い負かす。

桜学は全国区の名門校なので、それなりに偏差値も高い。

暴れてしかいなかった帝の合格は、まさに青天の霹靂――いや、その言い方はあの子に失礼だ。訂正。一言、帝の双子の妹である、尊(みこと)のおかげとしか言いようがない。

草賀尊は、高身長の兄と違って、百四十センチほどしかない。

本人が必死に正確な数字は言うまいとするので、衛も蒼も深くはたずねない。

喧嘩上等のくせに妹は大事にしている帝は、妹が気にしていることを訊き出そうとする輩は拳で黙らせてきた。

……それが暴れん坊になった原因かもしれない……。

尊は悲壮な顔で、衛と蒼に話したことがある。だから、帝の悪評は自分のせいなのだと。いや、そんなん暴れてる帝が悪いよ、と衛は尊に言ったけど。

尊は医学に興味を持っていた。両親とも医者や医学の研究者で、更に毎日怪我をして帰る帝のために手当の方法を学んでいくうちに、医師という仕事に魅せられたそうだ。

……帝の喧嘩理由が、いつだって弱い者を護るためだったことは、尊も衛も蒼も知っている。

衛の学校の生徒が、他校の生徒と諍いになっていたときも、帝は負けていた他校に加担しようとした、それが事実であるとも。