「Pクラスは他にもいるかもしれない。調が、『天科が雪を連れてくる』って言ってたなら、雪もその対象かもしれない」
「同じこと言っちゃうけどさ、なんでアマシナって人はそんなことしたいの? クラス一つつぶしておいて、同じモン作るって」
帝の疑問は率直ゆえに核心だった。蒼がぶすっとした顔で答える。
「……言ったろ、『実験初代』て。俺らで何かやりたいじゃねーの?」
「あ、蒼……」
話してはいけないことなのか――話したくないのか、衛が止めに入った。
でもそれは、その『何か』を知っているということ?
「――蒼ちゃん」
紫の声はいつになく鋭かった。穏やかな瞳に兄とその相棒を映す。
「知ってることがあるなら教えて。蒼ちゃんと衛ちゃんだけ知ってるのは、ずるい」
凛とした紫の声と眼差し。昔から紫は、秘密主義の蒼の、その秘密を暴ける唯一だった。
『ずるいよ』。その一言で。
「………」
蒼は更にぶすーっとして、衛はどうしようと悩んでしまっている。
紫にはわかる。蒼が瓦解するのも時間の問題だ。
「理事の天科さんが、わたしたちをPクラスにして、何かしたいんだよね? Pクラスのイメージを作り変えるとか? やっぱり進学校に不良クラスはマズいから、とか……?」
尊は考えながら口にしている。
紫にも、考えられるのはやはりそんなところか……。
「――一才発掘」
衛の声、だった。