「え? 俺、衛と同じクラスなら不良クラスでも構わないけど?」
「お前は自分でもPクラ妥当って言ってたろーが」
急に明るさを取り戻した帝に蒼からツッコミが入った。
と、紫は服の裾を妹に引っ張られた。力強い瞳が見上げてくる。
「紫。心配すんな。あたしも出来るだけのことはする」
「翠ちゃん……っ」
なんて出来た妹だろう。
紫が仕事のために聖堂を出るときだって、心配してついてきてくれた大事な妹。
姉のくせに、いつもいつも妹に護られてばかりで。
――でも、たぶん翠も、紫が流を疎んでいる理由は察してはいない。
紫自身、なんでそんな風に思うのかわからない。
蒼の相棒と呼ばれるほど、蒼が認めている衛だってすぐ傍にいるのに、むかつくのは流だけなのだ。
「ごめんね、翠ちゃん。わたしが不甲斐無くて……」
「それ言ったら蒼も不甲斐なくなっちまう。気にすんな」
ほがらかに笑う妹。本当に本当に、蒼の妹で、翠の姉でよかったと心から思う。
「んー翠ちゃん大すきー」
ぎゅうっと小柄な妹を抱きしめると、衛に冷めた瞳で見られた。
「おいそこ。シスコンまで炸裂させなくていい」
「衛ちゃんだって在お兄ちゃん大すきのくせにー」
翠を抱きしめたまま衛を見遣る。衛はため息を吐く。
「ふつーだから。ふつーの兄弟だから、うちは。お前らと並べるな」
それから、と衛は若干苛立ったように続けた。
紫が絡むと話は脱線しまくると、無造作に頭を掻く手がぼやいている。