「え……生徒――わたしたちまだだけど――逢えるような人なの? 企業グループのトップだよね?」
紫は驚きを隠せない。
天科全は、二十九歳にして日本有数の天科グループの総帥をつとめる人物だ。
蒼がさっきから「クソジジイ」呼ばわりしているのが天科全だったのか……。
「ああ、ちょっと」
「………」
蒼は軽く肯いた。この兄は……! 危ないことしないでっていつも言っているのに! 真顔でそういうこと言うなだし! 紫は兄への心配が募って怒りに変わる。
「で、逢えたんだけど」
「どうして逢えるの!?」
「簡単に言うと、天科はPクラスを今までと作り変える気だ」
蒼、紫を無視した。紫が絡むと話が進まなくなるのは承知されているのだ。
「……作り変えるもなにも――今年度の卒業生で、Pクラスはなくなっちゃうんじゃないか?」
翠が訝しげな声で言う。
今年度――紫たちの中学卒業と同じ年の、高等部の卒業生がPクラス最後の生徒と言われている。
現在の一、二年生にPクラスは存在しない。
蒼は難しい顔のまま黙っている。
「だから、俺らがなるんだってよ。Pクラスに」
声を挟んで来た衛を、紫が振り返る。
衛は苦いものでも噛んでいるような表情をしていた。