「あー、はいはい。落ち着け蒼。友達大すきのお前は赦せないだろーけど、うん、今襲撃したら通報されるから」

「じゃあお前が昨日みたいに連れて来てくれ」

「あの人に同じ手が二度も通用するように思えねえよ。まだ翠行かせた方が殴って連れ出せんじゃね?」

「妹の手は汚させねえ」

「……俺ならいいのかよ」

「在兄がやろうとしたら止めるけどな」

「いや、兄貴は殴るとかからっきしだから。弱いから」

衛がはたはたと手を振る。衛は小さい頃から空手少年だが、在は武道経験者ではない。

「あの……衛? もしかして俺、すげーマズい伝言役だった……?」

いつもなら帝から質問なんかされたら取りあえず無視の衛だが、今日は事が違う。

蒼と衛が相当動揺しているのは、翠も肌で感じる。

「マズくはない。けど、重大過ぎる」

「えっ……」

否定と肯定どちらともとれる返事に帝は絶句した。

だが、翠にはわかった。内容ではなく、衛がまともに答えてくれたことに感動してやがると。

「帝――や、尊。調の連絡先教えて」

「あ、うん」

衛に言われて、尊はポシェットからスマートフォンを取り出した。

蒼はまだ怒り狂っていて、紫がなだめようとしている。

基本的にだらだらしたノリの蒼がここまで感情を出すのは珍しい。

調の連絡先は衛が把握してくれている。自分は兄を止めるか。