草賀帝は、三人きょうだいの真ん中になる。
四つ年上の姉、弥(あまね)がいて、双子の妹の尊がいる。
帝の背丈は並より成長したが、尊の成長は緩やかだった。
理由は知っている。帝はそれを、自分の所為だと思っている。
そんな妹を嘲笑から護るために生きていたら、いつの間にか暴れ者呼ばわりされるようになっていた。喧嘩好きとか、不良とか。
そんな呼ばれ方はどうでもよかった。尊が嫌な思いさえしなければ、何を言われても気にならない。
そんな、妹中心だった帝の世界を変える出来事は、中学三年の春にやってきた。
前日、街でいさかいを起こしている集団がいて、帝は思わず負けていた方の味方をしてしまった。
――と言っても、加勢しようとした帝の姿を見止めただけで、双方とも散るようにいなくなってしまったが。
殴られると思ったのだろうか。と言うことは殴られるだけのことをしていたのだろう。
助けた相手にも逃げられることはよくあることだったので、帝は大して気にせず翌日も登校した。
そして一日の学生生活を終えようとした帝を待っていたのは、優等生の塊のような二人だった。
神林蒼と榊原衛。
桜宮学園中等部の頭目と称される二人。
帝と尊は公立の学校だったが、同じ市内なので有名な二人の名前と顔は知っていた。