二つ年下で現在中学三年の流夜は、すでに学者という立場を得ている。

大っぴらにしているわけではないが、なんやかんやと関わってしまうPクラス生は知っていた。

桜庭学園という私立校に通う流夜、吹雪、そしてその一つ年上で現在桜庭学園の高等部に在籍する降渡。

蒼はその三人を後輩にほしがっていた。

降渡はすでに高等部に入ってしまっているが、降渡の性格上、流夜が桜宮に来れば追ってくるはずだ。

「ま、いっか」

ぺしっと、衛が今朝調から渡された書類の端を爪はじいた。

「蒼の願いが叶えられるかはわかんねーけど、やれるだけやってみるか」

天科の持ってきた話が、流夜を桜学へ呼ぶ話に直接通じるわけではないが、流夜に接触するいい機会ではある。

「じゃあ、どんな結果になっても文句はなしですよ」

「俺が今まで文句つけたことあったか?」

「……毎回つけてくるでしょうが」

文句というか、戦果に対する感想というか。

「失礼します。天科サン」

「じゃあなー」

天科に向かって紫が頭を下げ、翠が手を振る。

「それでは」

流も軽く一礼して踵を返した。

「じゃ、楽しくやらせてもらいます。――高校生活」

天科がPクラス生に渡した、高校生活。

流夜たち三人は間違いなく『異才』だ。

桜宮学園に入学した頃の自分たちに以上に、普通の高校生活を手放している。

だから衛も渡したい。流夜たちに、自分たちが受け取ったものを。






END.