帝のあからさまな現実逃避にツッコミを入れたくなった衛だが、やめておいた。

帝にはこれ以上興味を持たれたくない。――ところだけど。

「話、聞かせろよ」

「逃げられるワケねえよな?」

両方の肩を衛と蒼に掴まれて、帝は逃げ場を失った。

言わなきゃよかったかも……帝の表情は後悔している。

「――で? あのボケハッカーもどきがなんだって?」

蒼の声は冷ややかだ。

蒼や衛よりも背の高い帝だが、顔色は悪い。

これから断罪でも待ち受けているようだ。

蒼の言うことなら何でも聞いてしまう妹二人が蒼の後ろには控えている。

流は、なんだろうこの展開……と置いて行かれた感満載の顔で眺めてくる。

「調から、何の探り入れろって?」

衛が問うと、帝の肩が大袈裟に跳ねた。

本当にバカ素直だ。嘘がつけない類なのかもしれない。

「帝くん……」

尊は、兄の考えナシ加減にげんなりしている。

自分から張られてもいない罠に頭突っ込んでどうするという苦悩の顔。

「……調が、尊じゃなくてお前にした理由はなんだ?」

「尊に言った方が直に翠に訊けんだろ?」

蒼と衛に睨まれて、帝は口を開かざるを得なくなった。

「その、ですね……」

帝、何故か敬語だった。