「――神宮流夜。現在中三。天龍(てんりょう)出身とされているが、実家は別。桜庭学園中等部入学のため上京。同い年に春芽吹雪、ひとつ年上に雲居降渡がいる。幼馴染で同郷。中学二年時、招待されてアメリカへ一年ほど留学。犯罪学の博士号まで取って来る。IQは測定不可能を叩きだしている。警察の側(がわ)の人間。――とまあ、これが流夜のカンタンなスペックですが。……なんで蒼あそこまで落ち込んでるの?」

調が見せた手帳を読み上げていた祀木雅が、教室の隅で壁に向かって体育座りをして小さくなっている蒼を見やる。

隣には猫柳白がいてどうにか励まそうとしているけれど、蒼は一向に浮上しない。

「蒼ちゃん、流夜くんたちを後輩にほしがってたから」

雅の隣の席の紫がのんびりと言う。

「いや、馴染みの降渡が高校桜庭な時点でほぼ諦めつくだろ?」

紫の机に腰かけた神林翠が、それこそ呆れたように息をつく。

蒼、紫、翠は同じ苗字できょうだいを名乗っているが、血のつながりはない。

サクラ聖堂という孤児院で育ったきょうだいだ。

紫は百七十五センチを超えて今も成長し続けているが、翠は百五十センチほどの体躯で身長の伸びも止まった。

幼馴染の衛が空手を習っていたため、翠も幼いころから空手の道にいる。

現在は桜宮学園でトップの衛に継ぐ強さと言われているくらいだ。

祀木雅は高校から桜宮学園に入った外部生だが、はっきり物を言う性格と誰に対しても物怖じしないため、よく蒼に問題ごとの解決に駆り出されている。

「調、蒼さっきどこに行こうとしてたの?」

雅が、疲れ切っている調に問いかける。

雅が朝、登校してきたらすでにこの騒ぎだった。

「桜庭に殴り込みに行くつもりだった……」