姿を見せたのは榊原衛と、作樹流。
衛は空手部のエースで三年生が引退してから部長になった。
蒼、紫、そしてもう一人の妹の翠たちとは幼馴染だ。
帝がヤンキーをやめるきっかけになった人物でもある。
そしてもう一人の作樹流は、Pクラスいちの高身長で、絵に描いたように整った容姿をしている。
紫とはモデル仲間でもあり、また紫に片想い中だ。
ブラコンをさく裂させている紫からは有害認定されているが、当の蒼には、『流以外に紫を引き取ってくれる奴はいない。だから頼む』と言われている。
蒼が流を認めるたびに、紫の流への視線はきつくなっているが……。
「蒼? どーしたよ」
空手部の朝練終わりの衛が、まずと蒼のえりぐちを掴む。
蒼はそれには怒らず、ふて腐れた顔で衛を睨んだ。
「あのね、衛……俺がいらない情報を蒼に渡しちゃったから……」
蒼にしがみついて行軍を止めようとしていた調は、やっと蒼から離れることが出来た。
しかし原因が自分の失言なのでしゅんとしている。
「なにを?」
衛が訊いて来る。
調は一度口を引き結んでから、うつむきながら小さく答えた。
「流夜たち、桜庭(さくらば)行くんだって、って……」
「桜庭高校? つって、降渡が桜庭行ってんだしあいつら中等部もあそここだし妥当じゃね?」
帝が、なにがおかしいの? と返してくる。
その反応に蒼はくわっと牙をむいた。
「流夜が後輩になるのだけを救いに一年やってきた俺の立場は!? 俺の苦労わかってくれるの流夜しかいねえんだよ―――――!」
そして頭を抱えて絶叫した。
Pクラス生から哀れみの目で見られる蒼。
他クラス生からは恐ろしいものを見る目で見られる蒼だった。