「上等だやってみろ尊に治療してもらうわ」
しかし意に介さない蒼。
「うっ……み、尊にそんなことさせるわけには……っ」
双子の妹である草加尊を出され、帝は一気にしょげてしまった。
溺愛とまではいかないが、帝は双児の妹を誰より大事にしている。
帝が一時期ヤンキーと呼ばれていた原因も、妹を護るためだった。口で蒼に勝てないことがわかっている帝は天井を仰いでうなったあと調を見やった。
「……調、これホントに止めた方がいいことなの? 蒼のことだからどっちかっつーと正義は蒼にある、みたいな問題?」
「違う違う! これは蒼の私情百パーセントだから! 止めないとやばいしかない!」
「そうなん? んー、蒼。衛とか流なら話せる? すぐ呼ぶよ?」
と、帝はブレザーのポケットからスマホを取り出す。
どちらに先に連絡しようか……ここはやはり蒼の相棒と言われる衛か? それとも蒼が妹を任せられると公言するほど信頼している流か?
迷っているうちに、透き通るような声に「なにしてるの?」と呼びかけられた。
「あ、紫。衛か流、どこにいるか知ってる?」
帝が、蒼の妹の一人である神林紫に応える。
紫は小学生の頃にスカウトされモデル業をはじめた。背の高いすらりとした体躯に、大和撫子と形容される容姿。
学内にもファンは多い。
だが、言い寄って来る者は皆無。
兄である蒼が絶対的に恐れられているためと、隣にいることが多い流の存在のせいだ。
「衛ちゃんも作樹くんもわたしと一緒にいたけど……あ、衛ちゃーん、作樹くんも、帝くんが呼んでるよー」
紫がやってきた階段の方に向けて声を飛ばすと、衛の声で「なんー?」と応答があった。