「蒼! お願いだからやめて! あいつらんとこ行くとか早まらないで!」
必死に蒼の強行を止めようとする調だが、何ぶん身長差が物を言ってしまう。
細身ではあるが高二にしては高身長の神林蒼と、中学二年生男子の平均身長ほどの地垣調では、胴に抱き付いて止めようとしてもずるずると引きずられるだけだ。
桜宮学園高等部の校舎廊下を憤然と突き進む、Pクラス統括と呼ばれる蒼を、ほかのクラスの生徒は怖すぎて止めようなどとは出来ずに見ているだけだ。
「衛―! 助けてー! どこにいるのー! 蒼が討ち入りしちゃうよー! この際帝でもいいから来て――――!」
「え、なに。呼ばれたと思ったら……」
途中の教室から顔を出したのは、他クラスの部活仲間のところに遊びに行っていた草加帝だった。
それを見て調は顔を輝かせたあと目いっぱい叫んだ。
「帝! 帝帝みかど~! 取りあえず蒼止めて! 俺じゃこれが限界なの!」
「あ、うん。わかった。蒼、調が困ってるからちょっとやめよ?」
「うるせえヤンキー窓から捨てるぞ」
「あ?」
穏便に蒼の肩に手を置いてとりなそうとした帝だが、蒼に射殺すような目で睨まれ元ヤン心が刺激されてしまった。
蒼の肩を掴む手に力が入る。
帝が掴まえたことで、蒼の進軍は止まったが……。
「蒼~? ヒトが丁寧なこと言ってるうちに収まってくんねえと俺お前の全身折っちゃうかも~?」
違う問題が勃発していた。