ふと、帝が追い廻しをぴたりと止めた。

衛は数メートル進んでから緩やかに足を止める。

どうした? 帝は真顔だった。あれほど衛を追い掛け回しても息切れしていない。衛もだが。

「しらべ――地垣調(ちがき しらべ)って知ってる?」

「当たり前だろ」

「とーぜん」

「調ちゃんがどうしたの?」

「……帝、その質問、みんなに聞かれてもいいのか?」

翠より先に、蒼、衛、紫が反応して、翠は怪訝そうな顔をした。

一人、その名前を知らない流は黙って聞いている。

地垣調。衛や蒼たちの初等部時代のクラスメイトで友人だ。

「……そういや帝と尊、調と同じ中学だったよな」

蒼が指摘する。そこまで言われて、帝は自分の失態に気づいたようだ。やべっ! と表情が喋っている。

「ちょっと帝くん!」

尊が帝の服の裾を引っ張って小声で怒る。

きっと調に、自分のことは言わないで何か探りを入れるようにでも頼まれていたのだろう。

初等部時代の調を知っている衛は、そんな風に思った。

しかし帝のこのバカ素直なところ、欠点だけではないから扱いに困る。

「翠だけに訊くように言われてんのか?」

言いながら衛は、妥当な判断だな、とも思う。

翠は、初等部から桜学のこのメンバーの中では一番の常識人だ。

「あー、あははは?」

おい、誤魔化し方。