「白―。恋が今日は遅くなるって。迎えはいいって連絡きた」

白の部屋をノックしてそう伝えると、中で何かがひっくり返って落ちたように慌てた音がした。

「白? 大丈夫か?」

親戚という立場であっても一応の線引きがある蒼は、無理にドアを開けたりはしなかった。

白からドアを開けた。

いつもの手帳――大分使い込まれている――で、話してくれる。

【わたしのとこにも同じメッセージきてた】

「そうか。メシ食ってるか」

【うん! 蒼くん料理も出来るの、すごいよ!】

「そうか? 白も出来んだろ。うちのみんなは俺以上に上手いし」

うち、という言葉が差すのがサクラ聖堂であること、白はわかってくれている。

恋のところへ来ても、蒼の『家族の意識』はサクラ聖堂へ傾いていると。

蒼自身、それを自覚しながら、恋や白に接している。

恋は気づいているかはわからないけど、白は感じているだろう。

家族を亡くした白の家族に、蒼はあまり近づいていないと。

……白は、家族が増えることを望んでいるのだろうか。