「……………は?」
肯定でも否定でもなかった。
……途中から感じていたが、『まさか』の方の肯定であるだろうか。
「何の話だ」
「……ご存知ないのですか?」
「知らん」
あっさり答えやがった。和は口が震えるのを感じた。
この……何年も悩まされ続けて来たことを、知らんだと……? 和は怒りを拳に抑えて、平静を装った。
「わたくし、幼い頃から言われておりましたのよ? 婚約者がいると。相手が天科様とは、知ったのは最近ではありますが……」
「……幼い頃?」
「ええ。生まれた時より、かは、わかりませんが」
……平静を装っているが、和の瞳は怒りの炎がたぎっている。
「……あのクソジジイどもが……」
天科が視線を下げて何かを呟いた。
「天科様?」
「いや、すまない。それが解消されていなかったのは俺の不手際だ。前時代を生きてやがった権力の塊の狸どもが勝手にそちらのご当主と勝手に結んだ契約だろう。今日の夜には解消しておくから、気にせず高校生を過ごしてくれ」
「………」
和、言葉がなかった。勝手にって二回も言ったし。
「あの……どういう意味ですの? 祖母は了承していなかったのですか?」