怖いカオは、ずっと前にしか見ていない瞳だ。

ヤンキー時代の。いや、でもさ。

「……無理だと思うけど」

「無理じゃないよ。ゼンとかレンとか使えるモン使って葬るから」

雅の想いとか、全く気付いていないよこの人。

雅は少し面白くなってしまう。剣が自分のために焦ってくれるなんて。

「笑いごとじゃないよ。十年も雅のこと見て来たのに気づかないなんて俺、どんだけヌケサクだよ」

「だって、目の前だよ?」

「なにが」

「私のすきな人」

「………」

剣は、雅との間の何かヒト型のようなものを両手で描いて見せた。そして叫ぶ。

「ここに誰かいんのか! 俺に見えない奴か!」

……幽霊? テンパりすぎでしょ。雅は苦笑をこらえた。

「こっちです」

雅は両手を伸ばして、剣の両頬を包み込んだ。

「―――え?」

「私は十年以上すきだったんだよ? 気づかなかったんだね」