「―――、私、ですか?」

「うん。雅」

「私……十五だよ?」

「十八になるまでは、婚約者? 恋人? 雅のすきなのでいいよ」

「………」

「学校の方は、ゼンは黙らせるから心配しないでいいよ?」

「そういうことするから天科理事に苦労かけるんだよ」

「ゼンは自分から苦労買っちゃうからいいんだよ」

「よかないと思うけど。……剣さんは、私のために苦労買ってきたじゃん」

「そうしたかったから、俺はいいの」

「……私、お父さんと同じ道に進むよ? 普通じゃない苦労ばっかかけるよ?」

「いいよ。いくらでも。だからね、もう俺んとこ来な」

剣が、雅に向けて手を差し出した。おいで、と。

「……………わたし、が」

「うん?」

「ずっと、すきだったって、知ってます?」

「………え?」

間の抜けた顔。初めて見る。

剣はいつだって飄々としていて、つかみどころがなくて、雅なんかには繋ぎ止めておけないと思っていた。

その剣が――

「何、誰っ? 雅、好きな奴いんの?」

焦った様子で雅に詰め寄る。

「うん」

「誰。――いや、誰じゃないな。どこの馬の骨だ。ぶっ殺してくるから」