「だって、剣さんが私の面倒見てくれてたのって、お父さんへの恩返しみたいなものって、言ってたじゃないですか」

「あー、言ったね」

あっさり肯定されて、雅は唇を引き結んだ。うう……そんな簡単に肯かなくても……。自分から訊いたくせに凹んでしまう。

「雅に気ぃ遣わせたくなくてねー」

「……気?」

いつも通りの剣の間延びしたしゃべり方に、雅は顔をあげて剣を見る。

「ちびの頃から知ってる雅の性格上、お父さんとお母さんの名前出せば反論出来ないのわかってたしねー」

「……それってむしろ気を遣わない?」

「雅、俺と居て気ぃ遣った?」

「……いいえ」

と、答えるしかない。

「だろ? そういう理由があるからって、雅は納得ずくで俺のとこに居てくれた。けど、そろそろそれだけじゃ物足りなくてね」

「………」

「俺と結婚しよう? そろそろ、本当にほしい」