唐突に、剣が顔だけ雅の方へ向けて聞いてきた。

「え? 十二月二十日だけど」

剣の意図はわからないが、素直に答える雅。

「そっか。まだ大分先だね」

「そうですね?」

今は四月だから、確かに先だ。

剣はカウンターに左腕を載せて、少しだけ雅の方へ体を向けながら続けた。

「雅が十八になったらさ、俺のとこ来ない?」

剣の提案に、雅は五回、瞬いた。

「……どこへ?」

「十八になったら結婚出来るだろ? 俺と結婚しない?」

「え………。ええええええっ!? な、何言ってんの!? からかいには性質悪いよ!?」

「からかいじゃないよ。本当に」

「だ、え、な!?」

「驚き過ぎでしょ」

噛みまくる雅を見て、剣は苦笑する。

「だって……結婚!? そういうのってお付き合いの延長線上にあるじゃ……?」

「最近は交際0日婚とかあるし?」

それは芸能人の結婚とかで、ニュースできいたことはあるけど――

「そりゃ……でもそれって、大人の世界というか――」

「俺もう二十七だけど?」

「私十五だよ」

高校に入学したばかりだよ、と言うと、剣は「そうだねえ」と唸った。