ギイ……猫の鈴を鳴らさないように、控えめに扉は開かれた。
一人残っていた剣は少女を微笑みで迎えた。
全は日があるうちに仕事に戻り、店を閉めた今、恋はもう帰宅している。
「その……すみませんでした……。計画通りに天科理事を連れて来れないで」
「気にしないで。ゼンに計略が通じないのはいつものことだから」
おいで、と剣はカウンターの隣の席を叩いた。
「雅」
祀木雅は、歩幅も小さく剣の方へ歩いた。
申し訳ないと思っているからか、足が進まない。
剣に怒られたことなんかはないのだけど……。
剣と同じく窓の外を見るように、カウンターに背を向けて座った。
「いやー、まさかねー。在と弥が付き合ってるのは知らなかったよ」
「私はお二人の存在も知らなかったよ。……なんか、衛だけ可哀想な終わり方してたけど」
「ねー。帝だけ万々歳だよね」
「……剣さん」
剣の間延した声に、雅は呆れたような平坦な声がもれた。
この人はいつも傍観者気取りだ。
「ね、雅の誕生日っていつだっけ?」