「よくある話じゃん? それより俺は、命と引き換えとはいえ、ハカセの成長を止めてしまったことは申し訳なく思っている」

「それも重いわ!」

榊原衛がまた怒鳴った。

「回復するまで一度も鳴かなかったハカセだから、もしかしたらあのオッサン声も副作用かもしれない」

「もうお前通報されろ。猫体実験にもほどがある」

神林蒼にも怒られている。しかし今日はよく喋るご主人だ。

いつもは寝こけているしか特技がないのに。

そしてハカセも、ご主人に出逢うまで『喋る』ということを知らなかったので、自分の声はこれしかないと思っている。

だからご主人が気負うことはないのだ。

成長が止まったのはまあまあ……だけど、初対面の人にも可愛がってもらえるし気にしていない。

今気になるのは、長身のこの男の子。とても清らかで、傍にいると空気が綺麗な気がする。

そしてそれを見つめてくる長身の少女。
 
ご主人が淋しそうにするから帰るのはご主人のところだけど、自分はノラネココンジョウがあると思うのだ。

それにしても。……楽しそうだなあ。みんな。

ご主人、こっち来てよかったにゃ。