「待てハカセ! 俺が抱っこすると一瞬で回転蹴りして逃げてくのに流はいいの!? ネコ風邪で瀕死だったハカセを拾って対抗薬作って回復させた俺の立場は!?」
「お前動物の薬まで作れんの?」
榊原衛が少し驚いている。
「あ、うん。でもその副作用で、ハカセそのときの大きさから成長しなくなっちゃったから、特許取れても製品化はしなかった」
「マッドサイエンティストかお前は! ハカセがこのサイズなのは雪の所為だったの!?」
「つーか、そんで特許取ったのかよ」
榊原衛が叫んで、神林蒼は平坦な声で問う。
「うん? 他にもいくつか持ってるよ。そっちは製品化された。そのカネを生活費にしてんの」
「「………」」
「雪、一人暮らしだから」
地垣調がばらした。何かとご主人を気にかけてくれる人だ。
「そうなのか? 親御さんは……」
「父さんは俺がキライだから、家出てきた。俺を産んだせいで母さんが死んじゃったから」
「「………」」
「重いよ雪。何背負ってんの」
黙り込む神林蒼と榊原衛の隣で、地垣調が平然と感想した。ご主人も平然と返す。