「あ、尊ちゃん! 猫がいるよー。真っ黒な子猫」

「ねこ!」

紫に言われて、尊が勢いよく反応した。

ハカセはご主人の姿をその集団の中に見止めて、そちらへ方向転換をした。

女の子がたくさん。これはたくさんなでなでモフモフしてもらえる予感だ。

案の定、そこにいた女の子は全部寄って来た。

ご主人と、昼間に逢った少年二人のほかに四人の男の子がいる。

「可愛い~! ちっちゃい~」

「長毛種だね。飼い猫かな?」

「元捨て猫だよ。名前はハカセ」

『ハカセ?』

女の子が声を揃えてご主人の方を見た。

「うん。俺がアメリカで拾った猫。連れて来た」

「雪くんの猫なの?」

そう訊いたのは、確か草賀尊。

何故かご主人はハカセに、写真つきの名簿を見せてクラスメイトの紹介をしていた。

「うん。一緒に外出るって言うから連れて来た」

ご主人はなかなかハカセの要求をわかっている。