「……ケン。何度も言うが、祀木刑事のことは、俺にもお前にも、どうしようもなかったことだ」
「何度も答えるけど、わかってるよ。でも……生きていて、ほしかったよ」
沈黙が落ちる。
……もう、いい?
恋の唇がそっと動いた。
頭がゆっくり離れる。
「おはよ、ゼン」
恋は、今、朝日が昇る頃のように眩しそうに目を細めて全を見て来た。
恋人のように。
「……おはよう」
気まずそうな全を見て、恋はにっこり笑った。
「わー、ゼンだゼンだー。ねーケン。これって夢かなー? ゼンがいるよ。逃げないでいるよ」
手を伸ばして全の頭を撫でる。くしゃくしゃとしても、全は手を払ったりしなかった。
自分にも他人にも厳しい全が、こういう甘えるような行動を許すのは恋にだけだった。
「……レン」
「んー?」
気分はまだ夢うつつの恋だ。