翠が、さも今思い出したとばかりに言うと、紫が目をむいた。
おい、そのカオは駄目だろ。衛は毎度ツッコみたくなる。この一応モデルが。
「なんで作樹くんが来んの! 仕事以外でも顔合わせるのいやなんだけど!」
激怒の紫に、翠が答える。
「流が高等部入るためにこっちのアパート住むんだって。今日から。紫にも話してあるって言ってたけど……」
「う……ちゃんと聞いてなかった……!」
「――だろうから、あたしに連絡先教えてくれた。面白いことありそうだったら呼んでってことで。衛にもあとで住所教えておいてって言われてるから」
「さんきゅー」
衛が肯くと、蒼の背中に抱き付いていた紫が、怒りを隠さずに蒼に抱き付いている。
あの、蒼が絞め殺されそうな雰囲気なんだけど……。ドンドン顔から色がなくなっていく蒼。
「ちっとも面白くないからね!? あの人いつもいつもまとわりついてきて~!」
「今の紫に言えた台詞じゃねーな」
「だな」
衛の言葉に翠が肯く。まとわりついていて気持ち悪いのはお前だ。
「え? あ、蒼ちゃん!?」
背高の紫に抱きつ――絞められて、蒼が意識を手放しつつあった。
「わーっ! 蒼ちゃんしっかりしてー!」
「犯人が言えた台詞じゃねーな」
「な」
肯き合う衛と翠。紫がガクガクと蒼を揺すっているうちに、蒼の魂が戻って来た。