「……やっぱり榊原兄の代でも作っておくべきだったかな……」
Pクラス生のいなくなった店内で、久方ぶりに揃った三人は穏やかな時間にいた。全が仕事に戻るまでの、今少しの時間。
「んー? 在たち?」
全から一つ離れた隣に座る剣は、カウンターに背を預けて窓の方を見ながら間延びした声で答える。
「ケンも見てたろ。お前とほとんど同じ瞳ぇしてたぞ、在は」
全は、はあ、とため息を吐く。
店の露台に居た全を追い詰めた在の顔は、向けられた全自身と、窓を通して店の中から見ることの出来た剣だけがはっきり見ていた。
「そーなの?」
「そうだよ。お前みたいな獣の瞳だったぞ」
「……俺、ヒトなつもりなんだけど……」
「手負いの獣みたいな瞳をする奴って結構いんだろ」
「んー? 在たちって今、クラスばらばらなんでしょ?」
「クラスは違うけど、全員で生徒会やってる」
「生徒会」
「あっちは全員で五人だったからな。どこで自分たちがPクラスであったかを知ったのかは、知らないが。……まあ、決定はしていたわけだから、内内に教師から告げられていたのかもな。――っと、レン。そろそろ起きろ?」