「でもそういうのって……そんな近場? で養子に入ったりとかってあるの?」
尊に訊かれて、衛は唸った。
「んー、普通はあんまないみたいだけど、兄貴は何かあったんじゃね?」
『………』
弟、軽かった。
衛は兄に視線を向けた。
「兄貴、何しに来たの」
弟妹たちにまとわりつかれている兄は、やっぱりいつもののほほんとした笑顔だった。
「天科サンに挨拶しに? 弟たちがお世話になってるみたいだし」
「あ、在兄ちゃん、それって俺もカウントされてる?」
「当り前だろ? 何言ってんだよ。蒼はバカだなー」
笑いながら蒼の頭を撫でる。帝以外も戦慄した。
《コエ―――ッ! ナチュラルに蒼をバカ呼ばわりしてブラコンの誰からも攻撃を受けないキセキの人がいた!》
思わず和は在を指さして衛に訊ねた。
「最強なの? 榊原くんのお兄さんは誰よりも強い人なの?」
「へ? 兄貴、喧嘩とかからっきしだよ? 俺と違って空手とかやってないし」
意味が違う。三兄妹と衛以外の誰もがそう思った。
「ちょっと待ってて。天科サンと話してくるから」
在が三人を抑えようとするが、結局三人を引きずる形で天科の目の前に立った。
天科は生徒の騒ぎを聞いて店の露台に出ていた。
「あ、兄貴? 天科は喧嘩強いって言うから――
ガンッ!
三兄妹が驚いて肩を震わせた。いきなり在が天科の隣の椅子に向かって蹴りを入れたのだ。
あ、在兄ちゃん……? 在の攻撃的な行動に、蒼ですら動揺していた。衛は驚き過ぎて固まってしまった。