「在兄ちゃんいんの?」

「ほんとっ?」

蒼と紫も、翠の騒ぎを聞いて飛び出て来た。在は朗らかな笑顔で迎えている。

「誰? あの人」

和が問うと、衛が答えた。

「ん? 俺の兄貴」

「衛の? 翠の好きな人とかなの?」

「いや? あいつらが懐いてんのは、兄貴って元は『神林在』だったからだけど? 蒼たちの兄貴でもあるの」

『…………え?』

疑問符の声。情報通の調も知らなかったらしく、目を丸くした。

「ま、衛? 『神林』だったって――その苗字って、その、蒼たちと……同じ境遇の人しか名乗らないって聞いた覚えあんだけど?」

「うん。身元不明な。『在』って名前も、蒼たちと一緒でサクラ聖堂の先生にもらったんだって。そのうち色々あって、うちに養子に入って俺の兄貴になったんだよね。それで俺もサクラ聖堂のこと知って、蒼たちと友達になった。俺が小学校入る前の話だよ」

「……マジすか?」

調はまだ信じられない顔だ。

「嘘言ってもしょうがないだろ。まー兄貴には蒼ですらブラコン発揮してたから、うちに来た当初は俺が、嫉妬全開のあの三兄妹に嫌がらせされまくった。お菓子横取りとか、昼寝してる間に顔に落書きとか、地味なやつ」

三兄妹。

冷めた瞳や怯えた眼差しが神林兄妹に向けられた。

無表情か疲れた顔が常の蒼がふにゃけたような顔をしている。……すげえっ!

「あ、在兄さんハンパねえな……」

衛大すきが高じて在の存在は知っていた帝ですら戦慄している。