剣が苦笑しながら言うが、恋は聞いたもんじゃない。
「えーむりー」
……大丈夫か、あの保護者。
「ってかゼンが停止しちゃってるから。離れてあげな」
「え? あ、道理でぶっ飛ばされないわけだ」
『………?』
十三人、揃って眉根を寄せる。ぶっ飛ばし? え、改めてこの二人、どういう関係?
「ゼンー、私だぞー。何年ぶりだー?」
「………」
剣の言う通り、天科は停止してしまったように微動だにしない。
――かと思っていたら、今度は恋の抱き付きもものともせず立ち上がった。
「ゼン?」
「戻る」
それだけ言って、身を翻した。そのまま戸口に向かったのを遮ったのは雅だった。立ちはだかるように。
「……祀木」
「お聞きしたいことは山ほどです、が。恋さんを放ってこのまま帰すわけありますか」
何故か雅が異様に迫力だった。
睨みつける眼差しが本物のように煌めく。
――蒼や衛が手を貸すまでもなく、雅の勝ちだった。
「じゃあ、恋さんとしっかり話してくださいね」
天科、元の席に戻された。