蒼の背後からのしかかるように生えて来たのは、蒼のすぐ下の妹二人だった。
神林紫と、神林翠。
「蒼ちゃん」と呼んで首に腕を巻き付けているのが現役学生モデルの紫。
蒼や衛よりも背が高い。
一方の翠は尊よりは背丈はあるが小柄で、小学生と間違われることもあった。
今はさすがに、少しは伸びているか。
紫はモデルをやるために、中学は桜学には行かなかった。
中等部ではそういったアルバイトととられる活動は認められていなかったからだ。
高校では許可が下りれば可能なので、二人とも桜学に復帰する。
紫のモデル業は、学校側には申告されていて承諾済みだ。
二人とも既にサクラ聖堂は出ていて、紫の所属する芸能事務所が提携しているマンションに住んでいる。
城葉都市の隣にある遠谷(とおや)市だ。
その主要駅からだと東京まで電車は一本で行けるので、安全と学業の時間確保も考えて、紫は聖堂を出た。
城葉からだと乗り換えが必要になるし、遠谷市からよりも時間がかかる。
紫が出て行くことになった際、翠もくっついていったのだ。
翠の方が家事能力はあるからというのと、女の子二人住まいの防犯上、腕の立つ翠がいれば蒼が安心ということらしい。
なんだかんだ、蒼も弟妹を大事にしている。
「ほしいんなら電話してるときにいるって言えよ。兄貴、二人がいるとは考えつかないって」
「衛ちゃんが気付いてくれればいいんじゃ?」
「俺も兄貴も超能力者じゃねえよ。何? 俺に妬いてんの?」
衛の疲れたからかいに、翠が拳を握った。
「むしろ焼いてる。だって蒼がうちにいる最後の日だってのに夜歩きすんだもん。妹だったら尾行くらいするだろ」
「ブラコンって呼ばれる類の妹だったらな」
残念ながら、二人ともその類だった。
「あ、流も来るよ?」