「んー、ハカセも一緒に学校行くって聞かなくてさあ。だから昼間、ハカセが隠れてる場所探してたらいい心持になって……寝てた」

「……ツッコミどころ満載だなあ、お前」

衛が平坦な瞳をする。

「んで、何? はかせ? なんで猫が学校うろついてんだよ」

若干頭に爪を立てられた蒼は、衛の腕に抱っこされている黒い塊を睥睨する。って言うか、ほんと毛玉だな。

「ハカセはこの猫。俺がアメリカで拾った」

「……はかせって名前?」

「カタカナで『ハカセ』ね」

「まだ子供か。何か月くらいだろ」

衛が、ハカセを抱き上げて目の高さまで持ち上げようとすると、するっと手を抜けて地面に着地した。

「四歳。声の渋い見た目は子猫」

「……飼い猫までツッコミどころいっぱいにしなくていいよ」

と衛は、逃げられた生後半年サイズの黒い塊を興味津々と見ているが、急襲を受けた蒼は憮然とした顔を変えられないでいた。

「お前、猫を学校に放して置く気だったのかよ」

「うん。ハカセ、こういう広いところすきだから」

蒼は眉間に皺を寄せるが、雪は全然気づいていないようだ。

ハカセがトコトコ歩き出してしまった。

「ハカセー、終業の鐘鳴ったら戻ってきてくださいよー」

ゔにゃー

「……それでハカセは戻ってくるのか?」

「うん。向こうでは施設内放し飼いにしてたんだけど、ちゃんと帰って来たよ」

蒼が言うと、雪はさらっと答えた。衛も問いかける。