「雑だなー。……言わねえ」
「お前から振っておいてそれかよ」
衛がそっぽ向く素振りまでするものだから、蒼はイラッときた。
「好きな子と同棲中の蒼には色々負けるしー」
「……は? 誰のことだよ」
「お前だよ。白のこと好きだろ」
「………」
黙った。
「あ、そっちは無自覚なんか。そーかそーか」
「何一人で納得してんだよ。意味わかんね」
「それよりさ、一行、なんなの?」
「ん? ああ――
ゔにゃー!
「え?」
「痛っ!」
しわがれた声とともに、蒼の頭に黒いものが降って来た。
「いって! ちょ、なんだよこれ! 衛!」
「えーと、……猫?」
頭の上で暴れる何かがわからないでいると、傍観者の衛がそれを取ってくれた。蒼はそれを睨みつける。衛の腕に抱かれているのは……黒い毛玉だった。
「あー、ハカセー。初木登りだからって今度は自分が落ちてんじゃないですかー」
「「はかせ?」」
次に樹の上から降って来たのはクラスメイトだった。綺麗に着地する。
「雪? ……お前、樹の上で何してんだよ」