「俺は男装趣味に興味惹かれるほど変わってないよ。それに、俺もすきな子、ずっといるしね」
「……そうなんですか?」
「そうなんですよ」
朗らかに剣が肯いたところで、「ケン~」と地底から這い上がるような声が聞こえた。
「も~無理。私にはこれでいっぱい」
カウンターにノートを放り投げた恋が、そのまま突っ伏した。
「はいはい。じゃあまた休業しちゃうかもだね。白、蒼、恋連れて帰ってあげて。閉めは俺がやってくから」
「剣さん、大丈夫すか?」
「うん。レンが死にそうになってるし。あ、あと、明日から一週間ここ、休むからー」
「了解っす」
「もし使いたくなったら電話してねー」
使いたくなったら? 意味がよくわからなくて剣を見ると、剣は「あー、明日からカンヅメだー」と嘆いていた。……作家さんとは大変そうだ。