その辺り――咄嗟の反応をコントロール出来ないのが蒼で、出来るのが衛だった。
コントロールした上で殴っているんだから世話がかかる、と昨日の帰り道、蒼にため息をつかれた。
年齢にそぐわない冷静さを持っている蒼でも、衛が殴っていなかったら殴っていたと言っていた。
が、それを咄嗟に判断出来なかった。
どうしようかと迷っている間に、衛はぶっ飛ばすという選択肢を選んでいた。
蒼なら胃液吐きそうなほど殴っておいても、肉まん押し付けたりはしなかっただろうけど。
そもそも蒼は、武闘系は苦手だ。
初等部で空手部に入った妹と違って基礎もないし、からっきし弱い。
「……蒼、大丈夫か?」
「え? ふつーに元気だったけど?」
兄貴も逢ったじゃん。今日の卒業式、衛は親が日本にいないので高等部に在籍する在が保護者席に列してくれていた。
「蒼が『神林蒼』でいるの、そろそろ終わりだろ? そういう意味で。特に弟妹は紫と翠を筆頭にブラコンばっかだし」
「………」
兄も同じ感想抱いていたー。和む弟。
色んな意味でカゲキな衛の兄にしては、在は穏やかというかのほほんとしているのだ。
「そうだけどさ。蒼が……『猫柳蒼(ねこやなぎ あおい)』に、なんのかなー?」
衛はその辺りが現実感がなかった。
ま、蒼だしどうにかすんだろ、と兄に手を振って家を飛び出した。