師匠から魔法学校に行けと言われてから半年が経った。
この半年間はあいも変わらず俺は日頃から行っていた魔法に打ち込んでいた。
そして、今日俺は魔法学校の入学試験を受ける。

「ほぉーでかいな」

プレッシャーで潰されそうになっている他のライバル達とは違い、俺の口から出たのはただの感想だった。

国立エトワール魔術学院。
由緒正しき国内一、二を争う名門校。
国の中枢を担う逸材達を世に排出して来ており、金の卵達も無数に蔓延る。
もちろん、編入試験は超難関。

立派だ。
威圧感さえある佇まいで城のように聳える学院。
単に名門校という話ではなく、建物そのものに歴代の猛者達が残した魔力痕が染み付いていた。

城の大門のような校門を進み、校舎へと向かう。
周りを見てみるとと雑魚ばかりかと思ったがそれなりに出来る奴もいるようだ。
もちろん俺の主観だが、魔力が漏れている人間は三流以下の魔術師だ。
そのような些細な魔力コントロールが出来ないと普通の魔法を扱う際にも魔力漏れを起こして、威力の減少を起こしてしまう。
初歩中の初歩だ。

魔法は、術式の組み立てと魔力コントロールで行使する。
二つの中でも最も大切な物は術式の組み立てだ。
術式の組み立てを少しでも間違えればどれだけ魔力を込めても魔法は発動しない。
そんな時に役に立つのが、あらかじめ術式が込められている魔道具(マジックウェポン)だ。
魔力を魔道具に込めるだけで魔法が発動する優れ物だ。

それはさておき、だ。
俺はなんだか注目を集めているようだ。
そういえば師匠も言っていたな。
田舎とは違い、都会では身分による差別が大きいって。
くだらない。

「あいつ見てみろ。家紋が入っていないぞ?どこの一般市民だ?」

校舎へ向かう道でもこう言われる始末。
まぁいいけど。

「天下のエトワール魔術学院に平民風情のゴミ虫が入るとは……」
「バトルロイヤル型の試験であいつに教えてやろうぜ」
「ハハッ。そりゃいい。教育だな」

うーん。
ボロクソに言われてるな。
たまには何?あの子カッコいい!とか言ってほしいものだ。

上質の布の服にに、魔力操作が簡単になる短剣を腰に刺してる。
良いとこでのボンボンか。
多分胸の紋章を見るに三級貴族か?

「平民なんて裏口入学しかないだろ」
「いくら払ったんだろうな?」
「まぁ、ウジムシはこの試験でいなくなるさ」
「待った。試験官を買ってるかも知れないぜ」

口の減らない豚どもだな。
制服を着てるし、あいつらは在校生か。
まぁ、家柄で勝てなくても実力で勝てば良い。
それにしても家柄でしか他人を判断できないか………。

「醜いな………」
「あ!?何だとテメェ!!」

おっと、どうやら声に出ていたらしい。

「すまん。じゃあ」

そう言い残して去ろうとしたがそうともいかないらしい。
在校生が俺を囲んでしまった。

「誰が醜いって???」
「ご、ごめんなさい!」

こういう時は謝っとくのがいいのだ。

「感情が入ってねぇ!!」
「平民風情が!!」

さらに怒らせた模様。
何?
俺の作戦は完璧だったはず………。

「お前達!!何をしている!!!」

と、大人の声が聞こえて来た。

「チッ。先生か。覚えとけよ」

と言い残して在校生は去って行った。
何がしたかったのか?
俺は在校生の頭の中がよく分からなかったl