「なぁ、ヒュース。お前、いくつになった?」

とある日のこと。
小さな木造建築の古屋の中、テーブルを隔てて座るのは、桜色の美しい髪をそのままストレートで流しており髪と同じ桜色の瞳で体の大きさは12歳ごろの少女。
俺の師匠、ムーン・リラクディア・リリアだ。

「はい、先日」
「なるほどなぁ……」

師匠は顎に手を当てながら思案し始めた。

「よし!!お前!魔法学校に入れ!」

「は????」

何言ってのこの人。
イミワカンナイヨ。
突然のカミングアウト過ぎて、俺の開いた口は閉じることができない。

「知り合いに魔法学校の学園長をしている奴がいるんだ。私がチョチョイと手を回してやるから不合格の通知は来ない!!」
「え?え?」
「ようし!!そうと決まれば!」
「ちょっと待ったぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

俺は師匠の話を遮るように叫んだ。

「どうして俺が学校に???」

そうだ。
まずは俺が学校に行く理由を説明してもらわないと。
俺は自分で言うのもアレだがこの国でもトップレベルの魔術師だ。
そんな俺がどうしてわざわざ魔法学校に?

「魔法資格は取っていて悪いことはない。むしろ好都合だ。一級魔術師免許を取得できればお前は信用第一のこの社会で生きていけるよ」

確かにそうだな。
そう言った免許がない時点で、俺は普通の魔術師よりも信頼がない。

「そして!!ここからが大事だ!!お前も()()()について知っておるな?」
「はい」

大賢者。
この国の魔法を治める為にできた国直属の部門、魔法局。
その魔法局のトップにいるのが大賢者だ。
つまりはこの国の魔法のトップが大賢者という称号を手にした人間だ。
この国の人口は8億人。
その中から年一人、又は数年に一人選ばれる程のごく少数の選ばれし者だけが手に入れる称号だ。

「それに成れたら、贅沢三昧できる………。率直に言おう!!!私は贅沢したい!!」

何言ってんだこの人は………。
つまり………。

「俺が大賢者になろうってわけですか?」
「流石ヒュースちゃん!」
「それなら師匠が成ればいいじゃないですか?」

俺はそう師匠に反論する。
師匠は弟子の俺から見ても率直に言うと化け物だ。
多分、この国くらいは余裕で地図から消せる。
つまり、やばい奴だ。
そんな師匠なら大賢者など、余裕でなれるはずだ。

「私はもう引退したんだ。だから弟子(ヒュース)を使って贅沢する」
「俺を道具みたいに使わないでください」

数回話してみたが、頑なに師匠は引退した身だと言う。

「それに、お前は小蠅程度にしか思っていないだろうが私が薦める学校に行けば少しは骨のある連中にも会える」
「貴族の連中か………」
「有名どころだとレイン家だとかウィンドブルク家あたりだな」

なるほどな……。
俺は15歳、入学試験を受けて魔法学校に入学できる最初で最後のチャンス。
魔法学校は基本15歳になる者しか入学させないのだ。

「もし、断ると言ったら?」
「……………師匠命令だよ」
「はぁ…………」

師匠命令なら仕方がない。
まぁ、今のうちから田舎から出て社会見学するのも悪くはない。

「分かりました」
「じゃあ、決まりだね。まぁ、ヒュースならなんとかなるでしょ?」
「ほどほどに頑張ります」

とりあえず、俺は何故か魔法学校に入学して大賢者を目指すことになった。


師匠から魔法学校に行けと言われてから半年が経った。
この半年間はあいも変わらず俺は日頃から行っていた魔法に打ち込んでいた。
そして、今日俺は魔法学校の入学試験を受ける。

「ほぉーでかいな」

プレッシャーで潰されそうになっている他のライバル達とは違い、俺の口から出たのはただの感想だった。

国立エトワール魔術学院。
由緒正しき国内一、二を争う名門校。
国の中枢を担う逸材達を世に排出して来ており、金の卵達も無数に蔓延る。
もちろん、編入試験は超難関。

立派だ。
威圧感さえある佇まいで城のように聳える学院。
単に名門校という話ではなく、建物そのものに歴代の猛者達が残した魔力痕が染み付いていた。

城の大門のような校門を進み、校舎へと向かう。
周りを見てみるとと雑魚ばかりかと思ったがそれなりに出来る奴もいるようだ。
もちろん俺の主観だが、魔力が漏れている人間は三流以下の魔術師だ。
そのような些細な魔力コントロールが出来ないと普通の魔法を扱う際にも魔力漏れを起こして、威力の減少を起こしてしまう。
初歩中の初歩だ。

魔法は、術式の組み立てと魔力コントロールで行使する。
二つの中でも最も大切な物は術式の組み立てだ。
術式の組み立てを少しでも間違えればどれだけ魔力を込めても魔法は発動しない。
そんな時に役に立つのが、あらかじめ術式が込められている魔道具(マジックウェポン)だ。
魔力を魔道具に込めるだけで魔法が発動する優れ物だ。

それはさておき、だ。
俺はなんだか注目を集めているようだ。
そういえば師匠も言っていたな。
田舎とは違い、都会では身分による差別が大きいって。
くだらない。

「あいつ見てみろ。家紋が入っていないぞ?どこの一般市民だ?」

校舎へ向かう道でもこう言われる始末。
まぁいいけど。

「天下のエトワール魔術学院に平民風情のゴミ虫が入るとは……」
「バトルロイヤル型の試験であいつに教えてやろうぜ」
「ハハッ。そりゃいい。教育だな」

うーん。
ボロクソに言われてるな。
たまには何?あの子カッコいい!とか言ってほしいものだ。

上質の布の服にに、魔力操作が簡単になる短剣を腰に刺してる。
良いとこでのボンボンか。
多分胸の紋章を見るに三級貴族か?

「平民なんて裏口入学しかないだろ」
「いくら払ったんだろうな?」
「まぁ、ウジムシはこの試験でいなくなるさ」
「待った。試験官を買ってるかも知れないぜ」

口の減らない豚どもだな。
制服を着てるし、あいつらは在校生か。
まぁ、家柄で勝てなくても実力で勝てば良い。
それにしても家柄でしか他人を判断できないか………。

「醜いな………」
「あ!?何だとテメェ!!」

おっと、どうやら声に出ていたらしい。

「すまん。じゃあ」

そう言い残して去ろうとしたがそうともいかないらしい。
在校生が俺を囲んでしまった。

「誰が醜いって???」
「ご、ごめんなさい!」

こういう時は謝っとくのがいいのだ。

「感情が入ってねぇ!!」
「平民風情が!!」

さらに怒らせた模様。
何?
俺の作戦は完璧だったはず………。

「お前達!!何をしている!!!」

と、大人の声が聞こえて来た。

「チッ。先生か。覚えとけよ」

と言い残して在校生は去って行った。
何がしたかったのか?
俺は在校生の頭の中がよく分からなかったl



「午前9時より試験を開始するので、受験者は会場入りしてください」

などと考えてた矢先だった。
もうすぐ試験が始まるらしい。
今の時刻は8時20分。
試験は9時開始だが、そういえば8時20分から会場入りだったか。
急がなくても間に合うが、遅刻して試験を受けれなかったらシャレにならないので急ぐことにする。

と思ったが。

「はて?」

試験会場が分からん。
どうしたものか。
とりあえず走って探すか。
ということなので俺は急いで試験会場を探した。

…………
………
……


「なんとか間に合った」

俺は試験開始5分前に会場にたどり着いた。
危ない危ない。
もし受けれなかったら師匠に殺されていたよ。
何はともあれ無事、会場にたどり着いた。
俺は自分の受験番号が書かれた席に着いた。

エトワール魔術学院の試験には、実技試験、筆記魔術式試験がある。
それぞれの試験、最高点を100点とした200点満点のテストだ。

正直、サルでも解ける。
師匠が調達した過去問を見たのだが、何聞いてんのこの出題者は?と出題者の頭を疑うほどの問題のぬるさだった。

周りを見てみると、他の受験者を無視して最後の復習をしている。
何が難しいのやら。

試験官の「はじめ」という声を合図に一斉にペンを走らせる俺を含めた受験者達。
魔術式試験と筆記試験は同時進行で制限時間100分の中でこの問題を解かなければならない。
筆記試験は一般教養と魔法の歴史について出題される。
魔術式試験はその名の通り、指定された魔術式を答案用紙に描けばいい。

一般教養はぬるま湯問題。
因数分解などの低レベルな問題しか聞かれない。

歴史は歴史書に書いてあることがそのまま出ていた。
覚えていれば簡単である。

俺にとっては頭の準備運動にもならない問題だ。
物心ついた頃からこれらの問題を師匠に叩き込まれたからな。

次に魔術式試験。
これに関しては少しはレベルが上がったように感じた。
中級魔法の魔術式を書けという問題。
そもそも、今の年齢で中級魔法を使える人間は将来大賢者に近づく者だろう。
もちろん俺は習得済みだ。

要するにこの試験で俺は満点以外有り得なかった。

だが、目立つのは面倒なので一応間違えておく。
おおよその予想の平均点の12〜5点上を行くくらいの点数だ。
これならトップ10には入るだろう。

これでよし。

十分くらいで終わったので、あとは寝て過ごした。
退屈なだけだったペーパーテストが終わって、いよいよ実技試験だ。
周りの人間は揃いも揃って憂鬱な表情だ。
コイツらにとっては難しかったみたいだ。

「受験者は次の試験会場に向かってください

魔法でのアナウンスが聞こえて来る。
次の実技試験は、大きく二つの試験に分かれる。

魔術の技能を測る試験とバトルロイヤル型の実践型の試験だ。

今から行う試験は魔術の技能を測る試験。
果たしてどのような議題が出るのだろうか。

「まぁ、なんとかなるか」

俺は試験会場へと移動を開始した。

次に訪れた試験会場はとてつもなく広い校庭だった。

平原には的がいくつかたてられており、おそらく魔術の試し打ちの練習場だろう。
大体、術者が魔法を打ち出す場から的まで50mか。
ぬるいな。

術を打ち出す場に受験者は受験番号順にならばされた。
テント下には術を出すための杖や魔道具が置かれていた。

「では、受験者諸君。あの数十メートル先の的に君達の魔法をぶつけなさい。テント下にある魔道具や杖を使ってくれてもいいし、何も使わないのも構わない」

試験官の声を合図に受験者達は動き出す。

もちろん俺は道具を使わずに手から魔法を打ち出す。
杖ならまだいいが、魔道具に頼る者を魔術師とは認められない。
魔道具には前もって魔術式が埋め込まれており、魔力を流すだけで魔法が発動できる優れものだが、それに頼るということはまさしく、自身では術式を組み立てできないと意思表示しているようなことだ。
つまりは、術式を使えないから魔道具を使っているのだ。
しかも、勝手に魔力を流すだけで魔法が発動するということは、魔法に不可欠なコントロールと魔法の鮮明なイメージをしないわけだ。
この頃からこの魔道具に頼り切っているこの受験者達には魔法が上達する未来はない。

杖は魔力を集中させる為の道具だから、もちろん術者の術式には当然関与はしない。
つまり、純粋な実力を持つ者は魔道具なしであの的に魔法を命中させられるのだ。

これはこの入学試験の明暗を分ける試験だな。

しばらくするとと他の受験者達は準備を終えたようだった。

ふむ、大多数が魔道具を使うようだな。
10人くらいは杖や道具無しで魔法を撃てるそれなりの奴らがいるようだ。

試験官は準備を終えたのを確認して口を開く。

「ではこの試験の主旨を説明する。今回の試験は、純粋に受験者の魔法の威力、魔力コントロール力を検査するものとなっている」

魔法の威力の検査ね……。
自身で魔力を魔力をコントロールできない魔道具頼りの奴等は、そこまで威力を出せないだろう。
魔道具はどれだけ込めようが、最初に設定された術式を超える威力を出せない。
しかも、俺が術式を
つまりは、魔道具を選んでる者達が多いこの試験では、その威力が平均点となるわけだ。
例えば60しか威力を出せない魔道具を扱う魔術師がが90人、それ以上の威力を出せる魔術師が10人とすると、必然的に60に近い威力が平均の威力になるのは分かるだろう。

おそらく、この試験の本当の意味は、魔法ができる者の選別だろう。

「試験の的は絶対に壊れないので、皆さん全身全霊で魔法を打ち込んでください」

絶対に壊れないねぇ………。
そう聞くとぶっ壊したくなってくるじゃないか。
まぁ、まずは様子見するか。
コイツらの実力査定と行こうか。

「さて、準備のできた者から前に出て来い」
「じゃあ俺が行こう」

試験官の言葉にいち早く手を上げたのは、燃えるようなベージュの髪と紅く真紅の炎のような目をしている美男子だ。
胸にはドラゴンの紋章。
貴族出だろう。

「おい見ろ!ライン家のシュルクだぜ」
「あの炎魔法で有名な?マジかよ、この目でやつの魔法が見えるとは」

周りが騒がしくなって来た。
かなりの有名人らしい。

「受験番号は?」
「4番です」
「よろしい、では始めろ」

魔力コントロールが出来ている。
周りの人間に自身の魔力量を錯覚させているのか。
結構いい奴いるじゃん。
魔術師の本質はどれだけ()()()()()()だからな。

師匠の話によると、このエトワール魔術学院は国中からエリート達が集まってくるそうだが、コイツはかなり強いだろうよ。

シュルクは指定された地に立って、手を前に突き出す。

「では、はじめっ!!」
大狂火炎(ヘルファイア)!!」

シュルクは大きく手を突き出して、灼熱の炎を放つ。

へぇ……。
上級魔法か。

魔法は全てで8段階に分かれている。
下から下級、中級、上級、特級、王級、賢王級、神級、禁呪となっている。
その中でも属性によって分けられてはいるが、大賢者でも神級以上は扱えるか怪しいレベルの魔法だ。
下級、中級は鍛錬すれば扱えるようになるが、上級魔法以降は才能との相談と言われている。
一気に難易度が上がるのだ。
本来、入学試験を受けるような受験者に扱えていい魔法ではないのだ。

シュルクの放った魔法は蛇、いや、生きている竜のように的へと伸びていき、大爆発を起こす。

バゴォォン!!!

一瞬で平原は焼け野原へと変貌する。
的は大きく破損していた。

「「「え?…………」」」

試験官を含み、会場がどよめく。

そりゃそうだ。
上級魔法なんて扱える者も少ない滅多に立ち会えない魔法だからな。

「まさか………的が破壊されるとは………さすがだ」

試験官もこの表情。
プークスクス。
いい顔してるなぁ。

「いえいえ、まだまだですよ」

片手を振りながら謙遜するシュルク。

「それに僕レベルの魔術師はこの場に数名居るようですよ?」

え?
なんかすっごいこっち見て来た気がする。
というより、自分レベルの魔術師が数人いるのに気づいているだけで及第点だ。
この試験も面白くなって来たな。

俺はニヤニヤが抑えられなかった、
「うわぁ………あんな奴見たあとだとやり辛い……」
「信じられない。本当に同い年かよ」

他の受験者達は見事に意気消沈していた。

しばらくするとチラホラと挑戦する奴らも出て来出したが………。

「ああ!!外れた!!」
「少し掠った!!!」
「やった!!完璧に命中したぞ!」

なんだこの残状は?
6歳児が魔法してるのか?
え?ここ、国1番の学校だよね?ね?
何このお遊戯会。
マジで洒落にならないわ。

「何を見せられてんだ?」

今も魔道具というサポートアイテム使いながらも、設定された威力すら出せない謎のスパイラル。
なにそれ?呪いのアイテムか何かなの?
とにかくレベルの低さが信じられない。

風砲(ウィンドフレア)

風のエネルギーはその少女の手に集まり、極度まで圧縮され、一気に解放される。
エネルギーは砲弾のように加速していき、的に命中して轟音と共に爆散する。
そして、砂埃が収まった後見えた的はシュルクの時と同じように大破していた。

風の上級魔法だ。

あいつの名前は確か……。

「あれが魔法の名門、ウィンドブルク家の神童、エウルア・ウィンドブルクか……あいつもヤベェよ」
「あいつも上級魔法使えるのか!?なんなんだよこの年の同期どもは!!」

そうだったエウルア・ウィンドブルクだ。
美しい金色の長髪を一つに束ねており、意志のこもった強い目をしていた。
確かウィンドブルク家は西の方の大貴族だったか?

「お前で最後だ45番。早くしろ」

おっと、いつのまにか俺以外は終わっていたらしい。

軽く頭を下げながら、位置に向かう。

「ほら見ろ、平民が一発芸するそうだぞ?」
「それは実物だな」

どこからか笑い声が聞こえる。
あのな?陰口は聞こえないようにいう物だぞ?
たっく、そんな舐められたら嫌だからね、お前らの度肝を抜いてやるよ。

「準備は出来ました」
「わかった。始めろ」

さて、とりあえず俺が使う魔法は上級魔法だ。
でもそれだけじゃつまらない。
炎魔法に風魔法を混ぜて、爆破魔法を作る。
ビックリしすぎて心臓止めないように気をつけておけよ。

「おっとぉ、魔法が出せなくて動けないようだ」
「魔道具を使えないのに道具無しで魔法を撃とうとするなよ」

野次が飛んでくるが気にしない。
今は術式のを組み立て中だ。

炎魔法と風魔法を合成する。

爆破魔法火風爆破(ヘルブラスト)の出来上がりだ。

俺は拳を的に向かって差し出して、一気に手を的に向かって開く。

火風爆破(ヘルブラスト)!!」

次の瞬間、的が大爆発を起こして、空気が震える。
俺が構築したのは1メートルほどの火炎球だ。
標的にぶつかったら風魔法で爆散するように設定してある。
そして、野次を奴らがしている間に速度を結構上げた。
ギリギリコイツらが見れくらいの速度だ。
そして放った。


ヒュン!!!

バゴォォォォォォ!!ドゴゴォォォォ!!!!

的に当たった火炎弾は一瞬で爆散して灼熱の炎を数秒間放ち続ける。

あらら………。
的、消し飛んでしまったな。
まぁ、これは俺が見込んだ奴らへのメッセージだ。
ここまで来たら相手してやるよってな。
つまりは、合成魔法くらい覚えないと俺レベルには辿り着くのすら難しいぞってことさ。
その証拠に、エウルアとシュルクの使った魔法をすぐにコピーして合成してやった。

試験官は腰を抜かして驚いている。

「な……なにが起きた!?」
「信じられねぇ………なんだよ……あれ」

俺は呆然としている奴らをドヤ顔で見ながら横を通り過ぎていった。
しかし、エウルアとシュルクの表情はニヤリとしていたのは気のせいだったかな?
実技試験の一つを終わらせた俺は別会場、すなわちバトルロイヤル型の戦闘試験の会場である学校の敷地内の森林に向かっていた。

「「ちょっといいかな」」
「ん?」

後ろから声をかけて来たのは、前の試験で圧倒的な実力を見せたエウルア・ウィンドブルクとシュルク・ラインだった。

「なんだ?」
「君は何処からの出身だい?」

シュルクがそう聞いて来た。

「別に、ど田舎からだよ。君たちとは違って平民だ」

そう言い残して振り返って俺は歩き始めた。
混合魔術を教えろとか言われてもめんどくさいだけなので、そういう面倒ごとはごめん被る。

「嘘をつかないで。貴方の魔法は平民の物とは思えない」

今度はエウルアがそう言って来た。
てか着いてくるな。

「うるさいな〜。俺がそんな魔法使っちゃ悪いか?」

聞き流して俺はそう答える。
確かにコイツらは優秀だが、それ以上でも以下でもない。
あの魔法はコイツらに上には上がいる事を教えただけだ。
俺はポケットに両手を突っ込み歩いていく。

それでも二人は話しかけてくるが、全部無視だ。

誰に教わったかだとか、私にも教えろだとか。
正直言ってめんどくさい。
まぁ、上を認めてプライドを捨てて教えてもらおうとすることは悪くないことだ。
その点は認める。

しかし、まぁコイツらは口が減らないな。
周りから注目を浴びていることを無視して話しかけ続けている。
しょうがない、ヒントくらいはやるか。

「同時に二つの術式を構築して、術式を合成すればいいんだよいいんだよ」

あとはノーヒントだ。
まぁ、混合魔術なんか俺が作ったんだけど、10歳の時に。

「二つの術式って、、そんなの難しすぎるね………」

確かに高度な技術は使う。
だけど俺という混合魔術を成功させた張本人がいるんだからな、出来ないことはない。

「はぁ……下級魔法の合成から練習しろ」

と伝えた時、遂に目的地に到着した。


「ここが………会場か……」

その森林は全て巨大な木々だった。
おそらく特殊な魔力を吸収させた木々なのだろう、異様な曲がり方をしている。

「バトルロイヤル型の試験か……楽しみだね」

シュルクは思わず口に出たようだ。

「まぁ、そこは同意する」

戦闘試験なんてワクワクしてしまうな。
俺たちは集合場所へと向かった。


……………
…………
………





「では最終試験のルールを説明させてもらう!」

簡易的な台の上で全員が集まったのを確認して、大声で試験官が言う。

「まず、この森林の中で戦闘試験を行う。お前らも分かる通り森は結界に囲まれている。そこから出た者は失格だ、その場で脱落。また、戦闘するに当たって、致命傷を与えられても失格だ。無傷で結界外のこの場に問答無用で転送される」

なるほど。
つまりは、森の外側に貼られている結界の外の出てしまったら失格か。
そして、敵に致命傷を当てられても失格か。

「試験は残り人数が20人になるまで続ける。敵を撃破した際には撃破ポイントが付く。失格になってもその撃破ポイントは減ることはない。つまりは、この試験の趣旨はどれだけ敵を倒せるかにある!」

簡単にすると倒しまくればいいって話か、簡単じゃないか。
敵に致命傷を与えて、結界外に送りつけてやればいいのか。
簡単な話じゃないか。
結界内は半径1キロ、その中に1000人を超える受験者全員での超乱闘か。
面白そうじゃないか。

「森に入り、戦闘体制を整える非戦闘時間として3分与える。笛が鳴ったら森に入れ。はじめの合図はアナウンスで行う」

そう試験官が告げるとピィーー!と甲高い笛の音が鳴る。
準備時間の始まりだ。

俺を含む受験者達は一斉に森へ入った。