「失礼する。お前たちは、相良 亜里香の友達であっているか?」

「はい!何の御用ですか?」

「あ、もしかして!亜里香が昨日絡まれたっていうイケメンさん?」

勘のいい美紗が尋ねる。

「絡まれたとは人聞きの悪い。彼女はどこに行ったのだ?

突如消えたのだ。」

「うーわ、マジで!?」

世羅は、あんなに用心深い亜里香がそんな簡単に人前で魔法を使うとは信じられなかった。

「逃げるから挟み撃ちにしたんだが。」

「うわー、やるねえ、なかなか。そりゃ亜里香もうざがるよ。」

初対面の人に対してはそこそこ失礼な言い方で麗羅は反応する。

「口の利き方をわきまえなさい!」

雄輝第一の楠本が声を荒げる。

「そんな自分たちの方が目上だと言うんだったら自分から名乗ってくださいません?

そもそもなんです?亜里香に近づいて何をするわけ?

亜里香も含め、あたしたちからしたら、あなたたち、追いかけてくる不審者、

というか、ストーカーにしか見えないんですよ。」

短気な麗羅は既に半ギレ状態である。

「何という…!」

「いや、いい。」

雄輝が楠本を遮る。

「確かに、あの子が逃げたのは、名乗らなかった俺のせいだ。

…親父と違ってあまり世に出ないようにしているからな。」

そう言って一度言葉を切る。

「俺は、寅のあやかしであり、虎ノ門家の次期当主、虎ノ門 雄輝だ。」

「はあ!?そんなことある?どおりで、こんなイケメンなんだ…

で、本当に亜里香が花嫁なの?」

美沙が尋ねる。

「なんだ?彼女が花嫁だったらいけないのか?」

雄輝は、本当に友達なのかと、疑いかけた。が…

「いや、そりゃうれしいですけれども!うれしくないわけないでしょう!

あなたを私たちが狙ってたわけじゃないんですから。」

麗羅が叫ぶ。

「でも、それにしたって信じられない理由があるんです。

昨日話聞いたときは新手の詐欺師かなんかだと思いましたよ。」

美紗の言葉に、雄輝は首をかしげた。

「失礼な。…その理由とは?」

「簡単に言っていいことではありません。

亜里香自身が、信用できると考えた人にだけ、知る権利があるんです。

まずはきちんと、信用を得るべきです。」

一番しっかりしている世羅が言う。

「じゃあ、どこにいるんだ?」

「どこって…あ!あなたも護衛の方たちも全員男ではないですか!

つまり…おそらくは女子トイレにいますよ!

絶対、入れませんから。」

「いや、ここにいるよ」

瞬間移動で教室に戻って来ていた亜里香が言う。

「亜里香!いつ戻ってきたの⁉︎」

驚いた麗羅が叫んだ。

「ついさっき。虎ノ門様が自己紹介するあたり?」

「全然気づかなかったな。すまない。」