「ふう… ここどこ?」

亜里香はあたりを見回した。とりあえず瞬間移動したため、どこについたのかがさっぱりわからないようだ。

「仕方ない、箒で行くか。」

最近全然乗ってないし、などと独り言をつぶやきながら、どこからともなく現れた箒で美紗の家へ向かった。



ピンポーン

「亜里香です。家出少女を一晩でいいので預かっていただけませんかあ?」

ドアが開いて、美紗が顔を出した。

「亜里香ー!無事だったの!」

「いったい、どうしたの!?」

「夢愛お姉ちゃん!?」

驚くべきことに、夢愛もいたようだ。

「あたしはただ、すごい魔力にきずいて、魔力がとうとう暴走したんだろうなって思ったから心配で心配で…」

「誕プレ送ったのが今日着くはずなのに、何の連絡もないから、家に押しかけてやったの。

そしたらすごい魔力だわ、南乃花は赤ん坊みたいにぎゃんぎゃん泣いてるから、

魔力暴走したってのがわかってさ。

ここに来るだろうなと思ったから、居候させてもらってるの。」

「ほんと、無事でよかったわ。」

そういうのは美紗の母、そして隣でめちゃめちゃうなずいてるのが美紗の父である。

美紗の両親は二人とも魔族なのだ。



「で、何があったの?」

「んー、南乃花に夢愛お姉ちゃんからの誕プレ回収されて、

あたしなんかだけに来るわけないだのどーのこーのいうからキレて、家を飛び出して、

そしたらなんか知らんイケメンに絡まれて、」

「え?それチンピラの間違いじゃなくて?」

美紗の問いに亜里香はふるふると頭を振った。

「チンピラだったら『あそぼーよ』って感じでしょ?

『見つけた、俺の花嫁』的なこと言われて、もう、パニック。

角曲がって瞬間移動して、そっから箒。

そもそも、魔女って花嫁になれるの?」

「なにそれ!聞いたことないよ。なんかの詐欺じゃない?

あくまでも花嫁は、人間の女子がなるもんでしょ。」

「夢愛お姉ちゃんがそういうんならやっぱあり得ないか~」

「いやいや亜里香、魔族って結構少ないんだから、特に日本では。

海外にはあやかしなんていないから、前例がないだけであり得るんじゃないの?」

やっぱり詐欺だったのかと納得しつつも、そしたらとんでもない役者である。

どっちにしろ一回は逃げたのだから、詐欺師だったら諦めるだろう。

「とりあえず、今日は泊めてくれない?疲れたし。」

「そりゃもちろん!」

「じゃ、私は帰るね。もう一回、あいつが奪ったのよりもいいやつを誕プレにして、美紗の家に送るね!」

「ありがと!」