「おはよう、亜里香!」

「おはよ、美紗(みさ)。」

亜里香の1番の親友は、美紗である。ちなみに、彼女も魔女。

県内には5人しかいないのだから、とんでもない偶然である。

亜里香は、学校では素をさらけ出していた。

陽キャ気質のため、友達はかなり多いのだが、やはり1番は美紗で、

家も近い、幼馴染だ。

「ねえ、なんか昨日の夜、機嫌悪かったでしょ?」

「えー、やっぱバレてる?」

「そりゃ、あの風にはマイナス魔力しか感じなかったし。」

「成績が悪いだと。」

「え、亜里香で悪かったら、うちらゴミ以下じゃん。」

と、グループの一員、世羅(せら)が言う。

亜里香の仲良しグループは、みんな亜里香と美紗が魔女であることを知っている。

「しかも、妹が全部平均取れたからってめちゃくちゃ褒めちぎってさあー。

あれじゃ誰だって頭にくる。」

「どうしてそんなにありとあらゆることされて、平気でいられんの⁉︎」

「世羅、あたし、ぜんっぜん平気じゃない。そろそろ限界。」

「もうこれ何年も前から思ってるけど、そろそろ爆発してもいいと思うよ。

10年以上の付き合いだけど、一回もあいつらがいいやつとは思ったことないもん。」

亜里香が知っている限りでは、美紗は亜里香の家族を「あいつら」以外の呼び方を絶対にしない。

「あ、水筒忘れた。サイアクー。」

亜里香は杖を取り出し、一振りした。

「お、魔女強し。」

「そー言えば、なんで杖使う時とそうじゃない時があるの?」

そう聞くのは、気の強めのグループのまとめ役、麗良(れいら)だ。

「んー、気分?」

「いや、違う違う。普通は杖なしじゃ何にもできないの。

こうみえて亜里香、世界でトップクラスの魔力の持ち主なんだから。

杖を使うのは、消費する魔力を最小限に抑えるためで、ただの補助。」

「え、トップクラス⁈」

「何言ってんの。夢愛(ゆあ)お姉ちゃんには足元にも及ばないよ。」

「夢愛さんに肩を並べられるのは、あんただけだろ。」

「夢愛さんって、亜里香のいとこの?」

亜里香には、身内にいるたった一人の味方である。

元々亜里香の魔女の血は、父方の祖母から受け継いだもの。それを父が受け継がなかったのだ。

だが、その父は、亜里香や夢愛が魔女だとは全く気付いていない。

そして祖母は、数年前に亡くなってしまった。亜里香にとっては、数少ない味方だったので、かなりのショックだった。

「うちらやばい人とともだちじゃん!」

「ははは・・・」

亜里香は苦笑するしか出来なかった。