バタン

ふぅーっと亜里香は息を吐いた。

窓を開けて、両手を外に突き出す。

さぁーっと強めの風が吹く。

「ありえないし。ほんっとにありえない!」

語気を強めるほど、風は強くなっていく。

亜里香が手を引っ込めると、風はやんだ。

亜里香は、魔女だった。

亜里香のいる県では、5人しか魔法族はいないらしい。

亜里香が魔女であることは、両親も妹も、全く知らなかった。

魔女の魔力にも2つある。

うれしいことや、落ち着いた気分の時にたまるプラス魔力と、悲しみや怒りからたまるマイナス魔力。

プラス魔力を貯められる量は無限である。しかし、無くなってしまうと、一週間以内に死んでしまう。

それに対し、マイナス魔力は、貯められる量に限りがあり、上限に達してしまうと、魔力が暴走、自分ではどうにもできなくなる。

そのため、マイナス魔力は溜まる度に開放しなければならない。

この数年間、いらいらしすぎて毎日魔法を放たないといけない。しかも、魔法とはわからない方法で。

そのため、亜里香はいつも風をおこすことにしていた。

ほかにも、あんまりにも腹が立って、南乃花に嫌がらせをしたこともある。南乃花が部屋に行くときに、

二階の廊下を凍らした。見ただけではわからないように。

見事にこけてた。

それを思い出してふふッと笑い、亜里香は机の下に潜った。