雄輝ははっととした。

あやかしが上の地位で悠々といられるのは、

自分たちの能力が優れているというだけではないと気付いた。

結局は、外見しか見られていないのだ。

「使われる、か。」

「そう、それが魔族が知られていない理由。

…都市伝説的な感じでは噂があるって聞いてたから知ってはいるかと思ったけど。」

「それで自分は花嫁じゃない、と?」

「まあ、そういうこと。花嫁って人間、つまりヒト族がなるんでしょ?」

「ああ、一応そうだが、お前が花嫁であることに変わりはない。

お前が今まで愛されなかった分、俺が愛してやる。」

亜里香はふわりと笑った。

「尻に敷かれても知らないよ?」

「やけに自信があるな。

…それと、俺とは学校が違うだろう。護衛を用意しようか。

登下校は車。」

亜里香は苦笑いした。

「必要ないよ。あたし一応、魔族の中でも世界トップレベル。

…自分で言うのも変だけど。

さっきの火だって、ものこそ燃えなくても、人が触れば致死レベルのやけど負うんだよ?」

「俺がお前の監視をつけたいんだ。

…変な虫がつくと困る。

それに、これだといいだろう。」

雄輝が手を出した。その掌の上には、小さな子猫がいた。

「え、かわよ!めっちゃかわいいじゃん!

なにこの小ささ!」

亜里香は大興奮である。

何しろ、手のひらサイズの子猫なのである。

可愛くないわけがない。

「俺の霊力で作った使役獣だ。

戦闘モードに入ると、進化して虎になる。」

亜里香はほわほわである。

「え~、すごいじゃん。そん時はあたしも虎になろうかな。

え~、かわいい~。

え、まって?」

亜里香ははっとした。

「護衛ってことは、学校にも来るんだよね?

なんつったらいいの?」

「こっちから話は通しておく。

さあ、話は終わりだ。行こうか。」

「どこに?」

「お前の家に、荷物を取りに。

一応、花嫁になったということを言っておかねば。」

亜里香は目を伏せた。

「あそこにはもう、用はない。」

「いや、行かねば。そうしないと、きっちり振り切ることもできないだろう。」

亜里香は、どうでもいいという風に、ため息をついた。

「そう。仕方ないね。」

「じゃあ、行くぞ。このままでは、夜になる。」

亜里香は時計を見た。もう6時半だ。

「うわ、まじ?もうこんな時間?」

「早くしないと、キスするぞ。」

「はああ!?」