「もう一つ。何を隠している?」

今度は亜里香が驚く番だった。

ここまでストレートに聞かれるとは、思っていなかったのだ。

「隠してるって、人聞きの悪い。普通は言わないことだから言ってないだけ。

妖族みたいに目立とうとはしないの、魔族は。」

雄輝は、眉をひそめた。

「魔族?なんだ、聞いたことがないぞ。」

「証拠を見せるのが、1番だろうね」

亜里香は、目の前のテーブルを炎で包んだ。

すぐに炎を消すと、テーブルは無傷だった。

「狐火か?」

「そんなわけないでしょう。あたし、あやかしじゃないもの。あ、そっか。」

亜里香は、あやかしでもできることでは意味がないことに気づいた。

しばらく、なんだったらどのあやかしも使えないのだろうと考え、

ぱっと、雄輝のそばへ瞬間移動した。

「え?…なんだ今のは?」

驚く雄輝に、亜里香は冷静に答えた。

「ん?瞬間移動だけど?いったでしょう、魔族だって。」

「だから何だ、魔族って。」

はあ、と亜里香はため息をついた。ここまで知られていないとは思ってもいなかったのだ。

「魔法使いよ。もしくは魔女。県内には5人だけ。

あやかしと違って、使える術が限られていないから、本当はもっと上に行けると思うけど…

まあ、顔面偏差値は様々だから、無理なのかも。」

あやかしの社会地位が高いのは、顔がいいことも影響している。

いいように思われやすいからだ。

「だが、亜里香のことはかなり念入りに調べた。なぜ出てこない?」

亜里香は笑った。

「あたしたちは魔法使い。情報だって魔法で隠せる。

自分が魔族だということが絶対に外にばれないようにしてるの。

当たり前でしょう?」

「なぜそうする必要がある?」

「目立たないため。バレてしまったら最後、社会の役に立つように使われる。

嫉妬もされる。…実際、100年くらい前までは魔族の存在は知られていた。

でも、無理に望まない結婚をさせられるし、どっかでちょーっとなんかあっただけで呼び出されたり。

妖族とは違って、人数も少ない。

…みんな過労で死んでいった。

魔族の平均寿命って、150歳くらいまであるの。

でもその時は、100歳前後。

それで、危険を察知した当時の魔族が、

一斉ストライキ?みたいのを起こして、

世界中の人々の記憶を消し、あたしたちの存在を隠ぺいした。

それから、自分の正体は本当に信用できる人にしか明かしてはいけないという掟ができて、

だから今あたしたちの存在を知っているのは、極々一部なの。」