「オムライス、食いてえのか」
大塚さんの言葉にいち早く反応したのは隼人くんだった。
「うんっ。 でも、おにいちゃん、オムライスの卵、焦がしてぐちゃぐちゃにしちゃうの
「わっ、言うなよっ」
「じゃあ、じいちゃんが作ってやろうか」
「「えっ!」」
ふたりは同時に驚いた声を上げて、私も予想もしなかったことに小さな声で「えっ」と驚く。
「おじちゃん、オムライス作れるの!?」
「まあな」
「卵、黄色くてキレイなやつ?!」
「そうだ」
「食べたい食べたい!! おにーちゃんも食べたいでしょ?!」
はしゃぐ隼人くんとは反対に、快人くんは「で、でも……」と遠慮がちに言う。 すると、大塚さんは「作り方も教えてやるから食っていけ」と快人くんを見て言って、服の袖を捲った。
「あんたも、食っていけ」
大塚さんはこちらに振り返るとそう言って、そのまま居間を過ぎて台所へと入って行く。
私はあっけに取られているけれど、縁側では隼人くんが万歳をしながら「やった~!」と歓喜の声を上げている。
「おじちゃんっ。 僕、作るところ見たいっ」
隼人くんはそう言うと、靴を脱ぎ捨てて家の中に上がってくる。 その後ろから快人くんが「あっ、隼人!」と呼び止めようとするけれど、隼人くんは大塚さんが入って行った台所に吸い込まれるように向かって行った。