私は、言葉にするよりもまず頷いた。
「……田辺は、“最後にじいちゃんに会わなきゃ”って、言ってました」
大塚さんは、口を硬く結ぶ。
「…………そうか」
俯きながら絞り出したようにそう言った大塚さんの表情は、うまく見えない。
「…………あの子には……つらい思いばかり、させちまったんだ」
小さな声のまま、ぽつりと呟くみたいに言った大塚さんの言葉に、ぎゅっと胸が掴まれたような感覚になる。
その時、「史緒!」と快人くんの声が聞こえて、私と大塚さんは縁側を見る。
すると、ボールを咥えたまめ太が縁側に座る田辺に勢いよく飛び付くと、田辺は「わーっ!」と言いながらまめ太の勢いと同時に身体を後ろに傾ける。
「もうーっまめ! 俺は投げられないんだって」
「あはは! まめ太、史緒のことすごく好きなんだね」
ここから見える景色の外側から、「まめたー! ボールこっちだよぉー!」と隼人くんの声が聞こえた。 どうにか田辺にボールを投げてもらおうとするまめ太を、田辺と快人くんが隼人くんの方に誘導しようとしている様子がなんだか拍子抜けでおかしくて、私は思わず頬が緩む。
「あのボールは……」
また呟くみたいに言う大塚さんに、私は視線を向ける。
「……史緒が、まめと遊ぶときにいつも使ってたやつなんだ」
縁側を見つめたまま大塚さんは言って、それから、一瞬だけ表情を崩して右手で目元を隠すように覆った。