「わはは、すげえ。 俺のこと見えるのかな」
その場でしゃがみ込んだ田辺に、まめ太もすんすんと鼻を鳴らして尻尾を振ってそこにちょこんと座る。 田辺の手は、まめ太の頭を撫でるようになだらかに動いて、まめ太はそれを感じているみたいで、なんだか嬉しそう。
隼人くんもちゃっかりその隣にしゃがみ込んで、自分と同じ背丈になったまめ太を覗き込む。
「おにいちゃん! すっごくかわいいよ!!」
「う、うん……」
その時、玄関の方から「誰だぁ」と声が聞こえて、扉がガララッと開いた。 私たちは一斉にそこに視線を送ると、白髪で、目付きの鋭いおじさんが立っていた。 隼人くんはサッと快人くんの後ろに隠れる。
私は、咄嗟に横目で田辺を見ると、田辺はおじさんをまっすぐ見て、「じいちゃん」と呼びかけた。
大塚さんは、田辺とまめ太が座っているところを見てから、私たちを見る。
「……お前さんら、うちに用か?」
そう言って、大塚さんは私に向かって言う。 私は「えっと……」と言いつつ田辺に視線を向けると、田辺と目が合った。
「……新名、ごめん」
田辺は、眉を下げたまま、また無理やり笑ったみたいな表情で言う。
ーー見えないんだ。
私は息を呑んで、手をぎゅっと握って、大塚さんを見る。
大塚さんには、見えていない。 私が、田辺のことを伝えなきゃならない。
「あ、あの……私、田辺の、田辺史緒くんと、同じ高校の……」
恐る恐る言う私に、大塚さんは「史緒の?」と右側の眉を少し上げて聞き返す。 私は声を出さずに頷く。