「あっ、わんちゃんいる!」

「隼人、しぃーっ」

隼人くんと快人くんは並んで塀の陰に隠れて、家の敷地内を覗いている。 ふたりの頭上にある表札には『大塚』と書かれていた。

私も隼人くんと快人くんの後ろから塀越しに覗いてみると、縁側に緑色の首輪を付けた柴犬が寝ているのが見えた。

「あっ、“まめ太”」

田辺は隼人くんの横に立って、庭を覗く。

「まめ太?」と快人くんが聞くと、田辺は「わんちゃんの名前」と言う。

「あのわんちゃん、まめ太っていうの?」

そのとき、隼人くんの声に反応したように眠っていた柴犬が目を覚まして、こちらを不思議そうに見つめながら起き上がった。

「え、犬起きたよ」

快人くんがそう言うと田辺もそれに気付いて「おお」と嬉しそうに笑う。 まめ太は「わん!」と鳴いて田辺のもとへと駆け寄って来ると、近くにいた隼人くんも「わあっ、近くに来た!」と歓喜の声を上げる。 

てっきりリードで繋がれていたかと思っていたので思わず「わっ」と驚くと、隣にいる快人くんも同じようなリアクションをしていた。